人工知能の開発事例と基礎知識|AIの基本から仕組みを学ぼう

水色の脳

人工知能(AI)について、ニュースや仕事などで見聞きする機会が増えました。後ほど紹介するように、さまざまなジャンルで人工知能の開発や導入が進んでいます。GoogleやAmazon、Facebook、MicrosoftやIBMなどといったグローバル企業でも人工知能を用いたテクノロジーが次々と生まれており、一つのブームのようになっています。

しかしながら、人工知能の名前を知っていながらも、その全貌をはっきりとわかっていない方も多いのではないでしょうか。今回は、人工知能の基礎知識として定義や構造、開発事例などについてご説明します。

人工知能の基礎知識

「人工知能(AI)」という言葉は一般的に知られていますが、その仕組みまではあまり知られていないのではないでしょうか。まずは人工知能の基礎知識を押さえましょう。

人工知能とは

人工知能とは、その名の通り人間が開発する「知能」のことです。人間の脳で行われる思考や判断、反応などを身に付けた機械を指して人工知能と呼びます。より具体的には、人間の脳神経ニューロンを模した「ニューラルネットワーク」でできています。ニューラルネットワークの詳細については、こちらの記事を参照してください。より理解が深まります。

人工知能を理解する上で欠かせないのが、機械学習です。機械学習とは、大量のデータをインプットして、そこに潜むパターンを見出す学習方法を指しています。たとえば、大量に猫の写真を読み込ませて「○○のパターンを持つのが猫」というアルゴリズムを構築し、未知の猫の写真を読み込んだときに「これは猫の写真である」と判断できるようにさせるのが機械学習です。つまり、人工知能を作り上げるための手段(学習方法)が機械学習となります。

機械学習と似た言葉に「ディープラーニング(深層学習)」があります。ディープラーニングは機械学習の一種であり、人工知能を構成するニューラルネットワークを発展させて多層構造に複雑化したものです。

機械学習とディープラーニングの違いは、機械の自律性にあります。一般的な機械学習では、ある特徴を見分けるための注目ポイント(「特徴量」と呼びます)を人間が指定する必要があります。それに対してディープラーニングは、人間が指定しなくても特徴量を機械自ら見出し、性能を向上させていきます。ディープラーニングでは人間の関与が浅くても、自律的に(人間の思いもよらない範疇まで)学んでいくのです。

機械学習やディープラーニングは、大量のデータ解析を必要とします。そのためコンピューターの計算能力が向上した近年になって、ようやく現実的に動かすことができるようになりました。

人工知能でできること

人工知能は人間の脳を模していますから、人間が行う単純作業のほとんどを代替できると考えられています。たとえば情報収集、記録、画像認識、音声認識、単純作業の最適化・効率化のようなタスクは人工知能の得意とするところであり、すでに実用化が進んでいます。

また人間の想定以上の自己成長を可能とするディープラーニングの登場によって、人工知能の性能も飛躍的にアップする可能性があります。これまでは独創性や意志判断など、直観とされる部分が人工知能によって代替されない能力であるとされてきましたが、絵や音楽を作成する人工知能の登場は、そうした認識をも覆しつつあります。

人工知能の基本・ニューラルネットワークとは

人工知能の基本となるニューラルネットワークについて、簡単にご説明します。別の記事も併せて参照してください。

ニューラルネットワークの仕組み

ニューラルネットワークとは、「ニューロンのネットワーク」という意味です。ニューロンは脳の神経細胞であり、受けた情報を処理して伝達する役割を担っています。ニューロン同士の接合部分にあるシナプスで電気信号をやり取りすることで、情報が伝達される仕組みになっています。ニューロンが複雑なネットワーク構造を織りなすことで、人間は複雑な情報処理を可能としているわけです。

人工知能におけるニューラルネットワークは、このニューロン同士のネットワークの仕組みを応用しています。一つのニューロンに情報が入力され、次のニューロンへ出力されるまでの流れをプログラム上で再現しました。実際の脳のシナプスの伝達効率はそれぞれ異なっているため、これを「重み付け」という形で人工知能に再現しています。

ニューラルネットワークの構造

ニューラルネットワークは、入力層・中間層(隠れ層)・出力層の三層構造で成り立っています。入力層と出力層だけでは単純な計算しかできず、実用に耐えるような作業のできる人工知能はできあがりません。そこで中間層を挟むことで、より現実に近似する形で関数を得ることができるのです。

この中間層をたくさん設ければそれだけ複雑な計算が可能となりますが、それぞれの中間層同士のパラメータ調整もまた複雑化し、誤差が大きくなるという弱点があります。この弱点を克服し、中間層の多層化に成功したのが「ディープラーニング」です。

ディープラーニングは、ニューラルネットワークより複雑な構造を持ち複雑な計算を可能としている、と理解するとよいでしょう。

企業による人工知能の開発事例

それでは、実際にどういった開発事例があるのか見ていきます。ビッグデータの解析やロボットなど、人工知能が社会でどう使われているのか覚えておきましょう。

ビッグデータの解析

人工知能は高度な計算能力を持つため、大量のデータ(=ビッグデータ)の解析や分類などによく用いられます。事業で収集されるビッグデータを解析し、判断や予測に用いるビッグデータのコントロールサービスについて、人工知能の研究と開発が進んでいます。

その一例として、サーバーの自動監視システムが挙げられます。サーバーは24時間365日稼働を続けており、異常があれば即座に対応する必要があります。そのため、人間のエンジニアが監視するのはとても大変でした。

しかし、人工知能が登場したことで、サーバーのログを読み込ませて正常パターンを解析し、異常パターンやその予兆となるパターンを検知できるようになりました。これまでのシステムが対応しきれなかった複雑な監視パターンを可能としたことで、監視やトラブル対応の工数削減に貢献しています。

ロボットの開発

人工知能を搭載したロボットである「Pepper(ペッパー)」を見たことのある人もいるのではないでしょうか。ソフトバンクのグループ会社が開発した感情認識ロボットで、駅や店頭などでお客さんを案内する仕事をしていることが多くなっています。

PepperはIBMの開発した人工知能「Watson」と連携しており、人間の質問を音声データとして理解し、最適解を返します。質問の音声データ自身もWatsonに蓄積され、その学習に役立てられるのです。他にも、「ロボアプリ」としてアプリケーションをインストールすることにより、ゲームやコミュニケーションなどの機能を楽しめるようになっています。

「ロボット」と言うと決まったプログラム通りにしか動かないイメージがあるかもしれません。しかし、人工知能を搭載することで自ら考えて成長する存在となる可能性があります。

ソーシャルゲームの開発

ソーシャルゲーム開発やアプリ開発にも人工知能が活用されています。大手ソーシャルゲームメーカーのグリーでは、ユーザーに最適なアクションを促すためのプッシュ通知の実装に人工知能を活用しています。プッシュ通知とは、「獲得ポイントアップ」「○日までキャンペーン実施」などユーザーの役に立つ情報をスマホ上で通知する機能を指しています。毎回同じメッセージを全ユーザーに通知しても効果は薄いため、ユーザーごとに通知内容や通知タイミングなどを最適化することが重要です。

人工知能は機械学習によってサービス利用時間や利用頻度などのログデータを学習し、ユーザーが離脱するタイミングやプレイの頻度・時間などに応じて通知対象や最適なタイミングを予測するようになっています。たとえば、夜中に頻繁にログインするヘビーユーザーにコアなアイテムを入手しやすくするキャンペーン情報を夜中に通知したり、10日ほどログインしていない初心者ユーザーには再ログインを促すメッセージを通知したりと、個別にプッシュ通知の内容を変えることが可能となります。

天候予測システムの開発

天気予報にも人工知能が利用されています。天気予報の精度は観測データの多さによって決まるため、もともと人工知能と相性のよい分野だったと言えます。IBMは、気象情報サービスと人工知能を組み合わせて、気象変化がビジネスに及ぼす影響を予測するサービスを開始しました。

日本IBMでも、気象観測データと人工知能の予測データを分析し、出力データを加工して企業に提供するサービスを行っています。

画像処理ソフトの開発

人工知能の特性の一つが画像認識能力であるため、画像処理ソフトの分野でも人工知能が活躍し始めています。

その一つが、白黒画像を自然なカラー画像に自動変換する無料ソフトです。画像の選択と色づけボタンという2回のクリックだけで、100年以上前の写真画像でも見事に着色できます。ディープラーニングの考え方を応用して、画像全体を踏まえた色づけを可能としています。

人工知能の基本知識を身に付ければ未来が変わる?

人工知能の基本知識として、ニューラルネットワークの仕組みについても言及しつつ機械学習やディープラーニングなどといった用語の説明や開発事例の紹介をしてきました。

人工知能はこれからの私たちの社会を大きく変えていく技術であり、その仕組みの理解はあなた自身のキャリアや子供の将来のためにもきわめて重要なことです。興味が湧いたら、人工知能を支える数学やプログラミングなどを学び、人工知能を自分で組み立てて動かし、そのすごさを実感してみてはいかがでしょうか。

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