人工知能(AI)が急速に進化していることから、今後社会では失業者がかなり多くなることが予測されています。しかしその一方で、人工知能の発展によってさらに需要が高まる仕事も存在し、おそらく子供たちは今とは全く異なる社会で生きることとなるでしょう。
ここでは、人工知能の発展によって今後なくなる可能性のある仕事と、逆に需要が増すと考えられる仕事について紹介します。
人工知能の発展状況と活用事例
今では毎日のようにニュースで取り上げられている「人工知能」ですが、どのように発展し、どのようなシーンで活用されているのかみていきます。
人工知能の進化と未来
人工知能は、人間が行う作業や活動を模倣することを目的として1960年代に研究がスタートし、第一次AIブームとなりました。この時代にアメリカの計算機科学者ジョン・マッカーシーにより「人工知能(Artificial Intelligence)」という言葉が誕生したのです。
その後1980年代から第二次AIブームが訪れるも、人工知能に人間の知識を覚えさせるには膨大な作業と時間が必要であったため、どのように実際の世界の意味合いと結びつけるかのシンボルクラウディング問題が指摘されるようになりました。
しかし、2000年代になるとインターネットの発展やビッグデータの登場により、ディープラーニング(深層学習)の技術も発達します。ディープラーニングというのは、人間が知識や情報を自分で学ぶのと同じように、機械が自分で学習・勉強する技術のこと。このディープラーニングが発展した結果、人工知能は囲碁や将棋で人間のプロを負かすことが可能となったのです。
このまま人工知能が進化を遂げていけば、2045年までには人間の知能を超え、進化スピードが一気に急上昇するシンギュラリティ(技術的特異点)が起こるといわれています。
人工知能の活用事例
今現在、人工知能は既に多くの企業や環境で活用されていますが、その中でも特に注目されている3つの事例を紹介します。
・自動車の自動運転
テレビやニュースで見たことがある人も多いと思いますが、現在自動車業界では人工知能を使った自動運転技術の開発が盛んに行われています。
メリットとしては交通事故が減るということと、ドライバーの健康管理や移動時間の有効活用が可能になるといったことが想定されています。また、交通管制システムと連携させることで、渋滞を予防することもできるでしょう。
・検索エンジン
私たちが普段当たり前のように使っているインターネットやスマートフォンの検索エンジン。実はここにも人工知能が活用されており、キーワード入力のみではなく音声や画像での検索も可能となっています。これによって、これまでは正確なキーワードを入力しなければ検索ができなかったものが、うろ覚えの状態でも的確に検索できるようになりました。
・ヒューマノイドロボット
ヒューマノイドロボットというのは、いわゆる人間の姿をしたロボットのことです。制御が難しいなどの問題がありなかなか実用化が進んでいませんでしたが、ITやコンピュータ技術の進化により次々と製品化が実現されています。
ヒューマノイドロボットは、今後少子高齢化によって起こる労働力の不足を補うことや、高齢者の家庭介護を担う役割が期待されています。
また、今まで人間が行っていた業務をロボットが行うことで、効率化や危険作業の回避が可能となります。
人工知能によってなくなる可能性のある仕事
今後人工知能が人間の仕事をこなすようになれば、当然仕事がなくなる可能性も出てきます。ここでは、今後なくなるかもしれない仕事をチェックしてみましょう。
情報管理をする仕事
人工知能が得意とするのは膨大な量のデータ管理や分析です。そのため、公的文書や個人情報の管理など、「情報を管理する」という職種については今後なくなる可能性が高いといえるでしょう。
もちろん、不正アクセス等のセキュリティ管理は必要になるものの、人間が管理することを考えるとはるかに効率的なため、今後公的な事務手続きなどは人工知能を通じて行うようになると予測されています。
このようなホワイトカラーの間接業務を自動化するテクノロジーをRPA(Robotic Process Automation)と呼び、欧米を中心に既に拡大している状況です。
インフラや輸送にかかわる仕事
前述したように、現代では人工知能による自動運転の開発が盛んに行われています。そのため、今後はタクシードライバーやバスの運転手といった仕事はもちろん、船や航空についても無人化されることが考えられます。
また、膨大な情報や顧客情報の管理が得意だという性質から、電気やガス・水道といったインフラ業についても消滅し、人工知能が代替するといえるでしょう。
知的判断を必要とする仕事
人工知能の代替は単純なサービスだけではなく、人間を相手とする弁護士や医師、会計士といった業界にまで及びます。たとえば、弁護士を人工知能で代替した場合は膨大なデータの中から必要な情報を検出し、それらの情報から的確な判断をするということが可能です。これにより、人間が行うよりも速く、そして正確に業務が行えるのです。
しかし、こういった業務はこれまで人間が対面で行っていたため、人間が機械をどこまで受け入れられるかというのが発展のポイントとなるでしょう。
また、人工知能は人間のように柔軟なものの考え方ができませんから、人によって判断基準を把握するのが難しいという課題もあるといえます。
人工知能の未来に備えて今からできること
人工知能が人間の手を離れて無限大に進化するシンギュラリティはいずれ起こると予測されております。そうなってから苦労しないためにも、今から少しずつ準備をはじめておきましょう。
プログラミングを身に付ける
今後人工知能自ら進化できる時代になっていきますが、それを手放しの状態で見ているのは非常に危険です。人間と人工知能がうまく共存してゆくためにも、人工知能を制御するプログラミングスキルを身に付けておくと良いでしょう。
また、今後は多くの職業において需要がなくなることが懸念されていますが、逆に人工知能をコントロールする側のエンジニアは需要が増えると考えられますので、職業選択の際にエンジニアを検討してもよいでしょう。
クリエイティブな技術を身に付ける
人間の仕事が次々と機械化される一方、人間のクリエイティブなスキルや価値観は人工知能に代替することができません。特に芸術や哲学的思考、宗教といった価値観は習得が難しいとされており、たとえ人工知能が発達してもコンテンツをつくるのは人間の役割になるでしょう。
そのため、自分のアイデアやセンス、感性を活かす技術を身に付けておくのもおすすめです。
人間同士の関係性が重要な仕事に就く
人間にしかできないもの、それは人間同士の関係性が重要になる仕事ではないでしょうか。相手とのコミュニケーションが必要な営業職や、生徒の気持ちや考えをくみ取る必要のある教育関係の仕事は、人間関係への高い配慮が必要となるため今後もなくなりにくいといえます。
ただ、人工知能が全く関与しないかというとそうではなく、会社や人材のサポート的存在として活用することで、人間の負担を軽減させるという考えがあるのも事実です。
人工知能(AI)時代に生き残るために
これまでの60年はスローペースで進化してきた人工知能ですが、今後は進化のスピードもさらに上昇し、5年・10年後には想像もつかない時代となっていることでしょう。さらに20年後にはシンギュラリティの到来も予測されており、既に「昔の人の教え」が通用しない時代になっているのです。
このテクノロジー進化の凄まじさはある意味恐怖でもあり、「人間がAIに支配される」「失業者であふれかえる」といった声もあります。しかし、人間を超えるテクノロジーをうまく活用することができれば、今よりもはるかに良い時代になる可能性だってあるのです。
そのためにも、今のうちからAIとの共存を視野に入れ、少しずつ対策を行っていくと良いでしょう。