パソコンやスマートフォンのみならず、スマートスピーカーやIoT関連の家電などインターネットに接続する機器が増えています。大人のみならず子供までもが、インターネットと深く関わって生活するようになりました。2020年度からは小学校でもプログラミング教育が必修化されることもあり、ますます子供とインターネットの距離が縮まると考えられます。
しかし、インターネットは便利な代わりにトラブルの巣窟でもあります。ネットリテラシーを備えて適切に利用しないと、子供がトラブルに巻き込まれてしまうかもしれないのです。今回は、ネットリテラシーの基本知識としてインターネット利用の際に注意したいこと、問題が起きたときの連絡窓口などをお伝えします。
ネットリテラシーの重要性
「ネットリテラシーを子供に身に付けさせなければ」と考える前に、そもそもネットリテラシーとは何でしょうか。そして、身に付けないとどうなるのでしょうか。
ネットリテラシーとは?
ネットリテラシーについて公的な定義はありませんが、一般的には「インターネットのルールや危険性を知り、適切な情報を取捨選択して利用できる能力」と考えられます。
そもそも「リテラシー(literacy)」とは「読み書き能力」という意味です。しかし、ここでは単に文字を読み書きするだけではなく、適切に情報をインプット・アウトプットする能力までが含まれると考えます。つまり検索エンジンで検索したりネットサーフィンができたりする以上に、インターネット上で正しく情報を収集して評価し、さらに発信できるところまでを「ネットリテラシー」とするのです。
電子商取引やプライバシー保護、セキュリティ対策などインターネット上の情報の海から自分を守ることも、ここには含まれるでしょう。
インターネット上のサービスが急速に拡大する現代において、ネットリテラシーは極めて重要なことなのです。
ネットリテラシーを子供に教育する必要性とは?
ネットリテラシーは、大人にとってとても重要なスキルです。しかしそれ以上に、判断能力の育ちきっていない子供をインターネットの被害者・加害者にしないためにネットリテラシーは重要です。
プライバシーにつながる情報発信は控える、悪質なサイトは閲覧しないなどの常識がないと、子供を悪意に晒す可能性があります。たとえばYouTubeやTwitter、Facebook、掲示板などで住所や電話番号を出して「炎上」してしまい、生活を危険にさらす子供の事例があります。
さらに、インターネット上での行動や発言が子供を加害者にする可能性もあります。悪意のある書き込みを掲示板やSNSで行うと、他人を再起不可能なほど傷つけるリスクがあります。軽い気持ちで書き込んだ言葉が取り返しのつかない問題を引き起こすこともあるのです。
このように、子供をインターネットの被害者にも加害者にもしないために、ネットリテラシーを学ばなければなりません。
ネットリテラシーが欠如するとどうなる?
ネットリテラシーがないままインターネットを利用するリスクを、もう少し詳しくご説明します。
・個人情報の流出
自分や他人の個人情報を、意図せずインターネット上で公開してしまうリスクがあります。住所が流出して悪意のある郵便物が押し寄せたり、電話番号が流出していたずら電話が大量にかかってきたりといった被害を受けるかもしれません。
流出した情報が犯罪被害につながる可能性もあります。電話番号が流出した後にかかってくるのがいたずら電話だけならまだしも、詐欺的な投資を呼びかけるような勧誘電話がかかってくる可能性があります。
また住所が流出したことで、ストーカー被害のリスクが高まります。インターネット上で不快な思いをするだけでなく、実生活でも危害を受けるかもしれないのです。
・著作権や肖像権の侵害
他人の著作物や写真を無許可で公開すると、著作権や肖像権といった権利を侵害する加害者になってしまいます。場合によっては告訴されたり損害賠償を請求されたりと、生活に致命的な影響を及ぼす危険があります。
特に子供はこうした権利への意識が低いと考えられます。「勝手に他人のものをアップしてはいけない」と教える必要があるでしょう。
・コンピュータウイルスへの感染
メールの添付ファイルや悪質なWebページなどを経由して、コンピュータウイルスに感染する可能性があります。使用端末のデータを全て削除し個人情報が抜き取られるケースや、保管されているメールアドレスやSNSのアカウントなどに自動で迷惑メールが送られ、ウイルス拡散の起点になってしまうこともあります。
最近では「ランサムウェア」と呼ばれる攻撃も話題となっています。感染したパソコンを勝手に使用不能状態にし、「元に戻すためには金を払え」と要求する不正プログラムです。もちろん、お金を払って元に戻る保証は何もありません。
・フェイクニュースによって被害が拡大する
直接被害を受けることは少ないかもしれませんが、フェイクニュースの拡散にも注意が必要です。
フェイクニュースとは、Web上で発信され拡散される「虚偽のニュース」です。特に災害や事件の際に、面白半分でフェイクニュースが発信されて問題化するケースがあります。
フェイクニュースの多くは、事実と見分けがたいものです。SNSで多くのフォロワーを集める「インフルエンサー」でさえフェイクニュースに騙され、拡散してしまうこともあります。
インターネットを利用する際に注意したいこと
インターネットを安全かつ快適に利用するために、何を注意すべきでしょうか。子供に限らず、大人も今一度インターネット利用を見直してみましょう。
許可なく個人情報を掲載しない
まず、個人情報を誰でも閲覧できる場所で公開しないことです。個人情報とは、住所や氏名、電話番号にとどまらず、顔まで含まれます。これは、自分の個人情報だけでなく家族や友人・知人の個人情報にも当てはまります。特に、第三者の個人情報を本人の許可なく公開してはいけません。
「住所や電話番号なんて公開するわけがない」と思っている人もいるかもしれません。しかし、意図せずに個人情報を公開してしまうこともあります。たとえば、スマートフォンで撮影した子供の写真を掲載するケースを考えてみましょう。スマートフォンで位置情報を取得する設定にしていると、写真を撮影した場所のデータが画像データとともに保管されます。子供の顔や名前を隠したつもりでも、仮に自宅で撮影した写真をアップすると大まかな住所を特定されてしまうリスクがあるのです。
確かに、かわいい子供の写真をアップしたいと思うでしょう。SNSなどに写真をアップする場合は、位置情報を取得しないようスマートフォンの設定を変更する、画像を加工して顔が出ないようにする、公開範囲を狭める(友人・知人だけ見られる設定とする)など、リスクを減らす対策を取るようにしてください。
画像を無断で転載しない
インターネット上に掲載されていたからといって、画像を無断で転載しないよう注意しましょう。掲載されている画像の中には、著作権が設定されているものも少なくありません。こうした画像をうっかり転載してしまうと、金銭を含めたトラブルにつながるリスクが高いです。
著作権の観点から最も安全なのは、自分で撮影した写真に限って掲載することです。また写真ストックサイトから購入したり、著作権フリーの画像を選んだりするのもよいでしょう。
虚偽の内容をSNSなどに掲載しない
「口から出たでまかせ」は残りませんが、SNSやブログ・掲示板などに書き込んだでまかせは記録に残ります。閲覧した人を不快にさせるだけでなく、内容によっては名誉毀損で訴えられる可能性すらあります。
悪意を持って虚偽の内容を書き込まないのはもちろん、なんとなく「たぶん事実だろう」と思っているだけの内容も軽々しくアップしないようにしましょう。簡単ではありませんが、書き込む前に「この事実や意見に客観的な根拠はあるのか」と自分に問うことを忘れないでください。
ネットリテラシーに反する行為を発見したら…
インターネットを利用していて、マナーに反する書き込みや振る舞いを目にするケースがあります。そうした場合に取るべき行動をお伝えします。
警察に相談する
犯罪を示唆する悪質な書き込みを発見したら、迷わず警察へ相談することをおすすめします。後から書き込みを削除する可能性がありますので、その場でURLや画面のスクリーンショットを保存してから警察に連絡を取りましょう。相談窓口については、警察庁の「都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口等一覧」を参考にしてください。ただ、緊急性が高い場合は、110番してください。
その他、緊急性は低いが違法な行為を見つけたら、警視庁から委託を受けて運営されている「インターネット・ホットラインセンター」へ通報しましょう。
Webサイトの管理者に報告する
犯罪性は低くてもWebサイトの利用規約に違反している場合は、管理者に報告しましょう。WebサイトやSNSでは、規約違反をはじめとした不適切な投稿があったときに通報できる窓口があるはずです。通報すれば、対象アカウントの利用停止や投稿削除などの措置がなされます。
Web専用の相談施設を利用する
直接警察や管理者に通報するのはハードルが高いと感じるかもしれません。そうした場合は、Web専用の相談を受け付けている機関へ相談するのがおすすめです。
たとえば「全国webカウンセリング協議会」や「子供とネットを考える会」が挙げられます。こうした機関に相談すれば、適切な相談窓口の紹介を含め対応をアドバイスしてくれるでしょう。
ネットリテラシーを身に付けて快適にインターネットを利用しよう
誰でもスマートフォンやパソコンからインターネットへアクセスできる時代になり、「いかにインターネットを適切に利用するか」という課題はますます重みを増しています。ネットリテラシーを身に付けないと、今回ご紹介したようなトラブルに巻き込まれるリスクが高いでしょう。
子供にインターネットを利用させるのであれば、最低限のネットリテラシーを教えるのが親の責任です。そのためには、親自身がネットリテラシーをきちんと身に付けている必要があります。インターネットの使い方を見直し、改めて「やっていいこと」「やってはいけないこと」を認識しましょう。