C++は「C言語」や「C♯」といったプログラミング言語と比較されることが多く、名前が似ていることから同じものだと勘違いしてしまう人も多いことでしょう。確かにC++は「C言語」や「C♯」と似ている部分もありますが、厳密には全く違う言語で、比較的難易度の高い言語に分類されます。
また、C++は負荷が大きい複雑な処理や大規模システムの開発に適しているという特徴から、将来性が期待できるとして注目されている言語でもあるのです。
この記事では、C++の言語としての特徴や難易度、活用事例についてご紹介します。
プログラミング言語C++の基礎知識
C++は比較的歴史が古く、C言語を基につくられたプログラミング言語となります。まずは、C++の特徴や習得難易度、C言語との違いをみていきましょう。
C++とは?
C++は、C言語の拡張版として開発されたオブジェクト指向のプログラミング言語です。オブジェクト指向というのは、「すでにあるモノ同士を組み合わせてプログラムを動かす」という考え方のことをいいます。
オブジェクト指向を身近なもので例えると、エアコンを使うときにリモコンを使うようなイメージです。「リモコン」と「エアコン」という複数のモノを組み合わせることでプログラムが動く(冷たい風が出る)という考え方がわかりやすいでしょう。
C++は、1983年にビャーネ・ストロヴストルップ氏という科学者により、C言語を基に開発されました。そのためC言語とは互換性があり、C言語で動いているものはC++でも動かすことが可能です。
また、C++にはいくつかの種類があります。代表的なものは「Borland C++」「Visual C++」 です。
◆Borland C++
C++を開発するためにボーランド社が開発したパッケージで、公式サイトにてダウンロードやプログラムの動かし方までが詳しく学べます。
◆Visual C++
マイクロソフト社の統合開発環境で使用されるプログラミング言語で、Visual BasicやVisual C♯といったほかの開発言語と統合した開発環境「Visual Studio 」のパッケージとして購入することができます。
C言語との違い
C++はC言語を拡張してつくられているため、C言語にはない機能が追加されています。オブジェクト指向となるC++では、プログラミングを容易にするクラスや、データ形式に依存しないジェネリックプログラミングのテンプレート、例外処理といった機能があるのに対し、オブジェクト指向ではないC言語にはこういった機能がありません。
そのため、C++はC言語よりも高度なプログラムを安全、かつ効率的に設計できるといえるでしょう。
C++の難易度
C++はC言語の発展系言語であることから、使うためにはC言語の知識が必要です。また、オブジェクト指向やコンピュータの知識を要するなど、C言語よりもさらに複雑な仕様になっているため、ほかのプログラミング言語に比べて覚えることが非常に多くなります。また、オブジェクト指向の概念を理解するにも時間がかかりますから、言語構造に戸惑う人も多く難易度が高いとされているのです。
ですが、すでにC言語を学んでいる人や、C言語と構文が似ているJavaを習得している人であれば、C++を理解するのは容易でしょう。
C++のメリットとデメリット
C++は難易度が高く非常に複雑な言語でありながら、世界的に高い人気を誇っています。そこには一体どのようなメリットがあるのでしょうか。
C++のメリット
C++を使用する大きなメリットとしては、プログラムの実行速度が速いという点が挙げられます。そもそも、C言語系のプログラム言語は処理速度に特化しているという特性がありますので、大規模な基盤システムや公共機関システムなどに使われることが多いです。
なかでもC++は、C言語よりも高速、且つ複雑なシステムを実行することができるというメリットがあり、高負担で複雑な処理を要するようなシーンでも快適に動作させることが可能です。
また、C++は人間が書いたプログラムを機械語に変換できるコンパイラ言語であるため、プログラマーは開発に集中することができ、生産性をより高めることができます。
C++のデメリット
前述したようにC++は言語仕様が複雑なうえ、オブジェクト指向という理念に基づいてプログラミングを行う必要があります。
そのため、C++の習得には多くを学ばなければならず、それだけ時間もかかるのです。プログラミング自体が初めてという初心者の場合、まずはC言語やコンピュータの仕組みを学び、その後にオブジェクト指向、そして最後にようやくC++が学べるようになります。すでにC言語やJavaなどを習得している人ならまだしも、初心者ではかなりの時間を要しますので、途中で挫折してしまう人も少なくありません。
また、C++では言語仕様を正しく理解していないと動作させること自体が難しくなるほか、JavaやPHPでは必要がない「メモリ管理」や、自分で処理をつくるといった複雑な処理も求められます。
C++でできることとは?
ほかの言語に比べて処理速度が速いというメリットのあるC++は、大規模システムや公共システムだけではなく、私たちが普段使う携帯電話や家電製品にも使用されています。
ロボット技術の開発
現代では人工知能(AI)やディープラーニングといった言葉をよく耳にするようになりましたが、こういった最先端テクノロジーの開発にもC++が使われています。特に、ロボットの制御技術には多く用いられており、C++を使うことでロボットに複雑なプログラミングを命令できます。また、ロボット以外に各種機械の制御としても採用されています。
C++は機械工学を学ぶ人にとって必須のプログラミング言語なのです。
IoT技術の開発
IoT(アイオーティー)とは「Internet of Things」の略称で、「モノのインターネット化」という呼び名を聞いたことがある人も多いと思います。IoTでは、モノに対してIoTデバイスと呼ばれるセンサーを付け、これをインターネットに接続することでモニタリングやコントロールが可能となるのです。
C++は、このIoTシステムの開発に採用されており、特にサーモスタット(温度調整装置)のようなIoTデバイスが複雑な処理を行う場合に適しているといえます。
組み込みシステムの開発
組み込みシステムというのは、ハードウェアなどの機器に組み込まれて動作するソフトウェアのことをいいますが、「特別な用途として設計されたハードウェアを制御する」という解釈もされています。
組み込みシステムが活用されているものには、炊飯器や電子レンジといった家電製品全般や、携帯電話やゲーム機などの情報系機器、街でよく見かけるエレベーターや信号機とさまざまなものがあり、これらのシステム開発にC++が使われているのです。
C++は今後のIT化に欠かせない存在
C++はC言語を基につくられたオブジェクト指向のプログラミング言語で、負担が大きく複雑なプログラムでも快適に動作させることが可能です。主に大規模システムや公共システムなど、比較的重要なシーンで使用されることが多く、プログラミングを学ぶのであればぜひ習得したい言語だといえるでしょう。
しかし、C++ではC言語の知識が必須になるだけでなく、オブジェクト指向の概念やコンピュータの仕組みといったさまざまなスキルが求められるため、ほかの言語に比べて難易度が高くなります。そのため、まずはC言語やコンピュータについて学び、次にオブジェクト指向、最後にC++というように、段階を追って学習する必要があります。
とはいえ、C++は今後ますますIT化が進む日本社会に欠かせない存在です。ぜひ学習に取り組んでみてはいかがでしょうか。