IoTビジネスで生活はどう変わる?企業での活用事例と今後の課題

指差してる人

個人用コンピューターが普及し始めてから20~30年ほど経過し、パソコンやインターネットをプライベートでも仕事でも使用することが当たり前になりました。そして近年注目を集めているのが、あらゆるモノをネットワークでつなぐ「IoT」です。

IoTは、あらゆる産業にインパクトを与えることが予想されます。これからの社会がどうなるか考える上で、IoTビジネスを知ることは必要不可欠です。今回は具体的なビジネスの事例紹介を中心に、IoTについてご説明します。

IoTビジネスによって起こる生活の変化とは

IoTの定義と、生活に与える影響について説明します。特に、IoTと関係の深い自動車・家電・交通・流通の変化について取り上げます。

IoTとは?

IoTとは、「Internet of Things」の略語です。身の回りのあらゆるモノがインターネットに接続されることで、遠隔から操作できたりお互いに通信しあったりと、新たな機能やサービスを生み出すという考え方です。

かつてのインターネットは、主にパソコンやスマートフォンを接続して通信に用いるだけにとどまっていました。これに対してIoTは、インターネットとは無縁と思われてきた自動車や時計、エアコンなどといったアイテムまでもが接続されている状態を指しています。

一例として時計がインターネットにつながっていると、時計を身に着けている人の位置データをデータセンターに送信してコンピューターが分析し、トイレや教室などといった施設の利用状況を把握できます。

インターネットにつながることでモノの機能が人間の利用状況によってカスタマイズされたり、モノ同士がデータをやり取りして新たなサービスを生み出したりすることが期待されています。

IoTビジネスによって生活がどう変わる?

IoTはさまざまな業界のビジネスを変貌させつつあります。ここでは、その中でも特に自動車・家電・交通・流通の4点を取り上げます。

・自動車

自動運転車の開発に関するニュースを聞いたことのある人も多いでしょう。コンピューターが提供する運転状況に関するデータを、AIが蓄積・分析。渋滞のない道を示してくれたり交通事故を防いでくれたりします。

各国のテクノロジー企業や自動車メーカーが競って取り組みを進めています。もし完全な自動運転の実現が成功すれば、ハンドルやアクセル・ブレーキの操作を自動車が自動的に行うようになります。加齢による認知能力の低下によって、高齢者の免許返納が警察からも推奨される昨今ですが、自動運転であれば高齢になっても気軽に自動車を利用して移動できるのです。

・家電

家電業界でも、IoTの存在感が増しています。照明やエアコン、テレビ、冷蔵庫、炊飯器などインターネットに接続可能な家電が販売されており、遠隔操作や自動予約、消し忘れ防止などの各種機能を実現しています。

また利用者の生活リズムに関するデータを蓄積して、快適さと省エネを両立するタイプもあります。これにより、最適な稼働を実現します。たとえばエアコンの場合、寝る時間や晩ご飯の時間など、タイミングに合わせて室温を調整したり、GPSで利用者が自宅に接近したことを感知して自動的に空調をオンにしたりするIoTアプリが登場しています。

・交通機関

バスや電車の運行情報をリアルタイムデータとして取得し、停留所や駅の電光掲示板やモニターに表示させる機能が実用化されています。たとえば京都市交通局では、バスに「ビーコン」と呼ばれる発信器を埋めこんで位置情報を取得し、各停留所にあるディスプレイに反映するサービスを実施しています。

こうした機能が一般化すると、公共交通機関の待ち時間の解消や渋滞の回避など、交通機関の利用満足度向上が期待されます。

・物流機関

物流業界では、ドローンや自動運転を使った配送サービスに期待が集まっています。国土交通省は、早ければ2018年中にもドローンによる荷物配送の実現を目指して検討を進めています。法律の壁もあるため実用化は容易ではありませんが、部分的ながらドローン物流サービスの提供を始めた企業も出てきています。自動運転についても、人手不足や交通事故などといった課題の解消につながるとして、試験走行や実証実験などが盛んに行われています。

ドローンや自動運転を活用した配送サービスが広まると、速やかな在庫状況の確認や、配送ルートの作成などの効率化といった利点が生まれます。運転者の疲労の影響もなくなるため、配送のコストダウンやスピードアップが期待できます。

IoTビジネスがもたらすメリットと課題

IoTビジネスの現状について、いくつかの業界の事例を紹介しました。それでは、IoTビジネスにどんなメリットや課題があるのか、一般的な視点から考えてみます。

IoTビジネスがもたらすメリット

IoTビジネスのメリットとしては、私たちの生活や仕事の効率化、そして新サービスの創出が考えられます。

・生活や仕事の効率化

これまで人間がやってきた作業の一部を、インターネットにつながった機械が代替することになります。遠隔でのモニタリングや操作、作業の自動化によって生産性がアップするのは間違いなく、私たちにとって大きなメリットとなるでしょう。

たとえば、先ほど紹介したエアコンの自動運転があれば、必要なときに快適な温度(寒すぎず、暑すぎない)の調整が可能です。利用者が暑がりなのか寒がりなのか、在宅時間帯はいつ頃なのかなどの個別状況にも合わせてくれますので、生活満足度も向上するでしょう。

また子供や高齢者にIoTセンサーを持たせることで、保護者がいなくてもセンサーが見守り機能を果たしてくれます。IoTがパートナーとなって人間の苦労が減り、新しいライフスタイルの確立が期待できるわけです。

・新サービスの創出

IoTによる新サービスの創出には、2つのタイプが考えられます。1つは、IoTによって既存業務の負担が軽減されることで、人間が新サービスの創出に向けて力を注げるようになるというタイプです。もう1つは、モノ同士がインターネット接続され、IoT自身が新たな付加価値を生み出すタイプです。

前者のように業務負担を軽減するIoTサービスの例は、自動車の自動運転化です。これにより、トラック運転手の人的コストが軽減され、その分をトラックやシステムなどの設備投資に回せることになります。特急配送や時間帯指定など、新たな配送サービスの運用にも余裕が出てくるでしょう。

後者のようにモノのインターネット接続自体が生み出すサービスとして挙げられるのは、先ほどご紹介したエアコン制御アプリです。エアコンがインターネットにつながることで、それを制御するエアコン制御アプリの需要が生まれます。他にも、IoT家電などをトータルでサポートするセキュリティサービスも登場しました。モノがインターネットにつながることで、連鎖的に新しいサービスが生み出されるのです。

IoTビジネスの課題

IoTビジネスの課題についても触れておかなければいけません。特に、セキュリティ対策をはじめ緊急時の対応は大きな課題となります。

・セキュリティ対策

パソコンやスマートフォンのみならず、家中のアイテムがインターネットに接続されるということは、ハッキングの危険性が増すのみならず、その被害が大きくなる危険性も増すことを意味しています。

たとえばGPSを埋め込んだ時計が乗っ取りを受けたとすると、位置情報のデータが抜き取られて「いつ、どこにいたか」を知られてしまうリスクがあります。またネットワークに侵入されて、家電の異常動作やさらなる攻撃の足がかりにされる可能性があることも頭に入れる必要があります。実際、遠隔操作によって金庫が解錠されるような被害も発生しています。

・ネットワークがダウンする危険性への対処

ハッキングのように人為的な攻撃でなくても、災害やサーバートラブルなどによってネットワークそのものがダウンした場合にもリスクがあります。いろいろなモノがネットワークにつながっているわけですから、ネットワークがダウンすると一斉に動作不良を起こすかもしれません。

IoTを活用したアイテムを取り入れる場合は、ネットワークが使えなくなるとどういった対処が必要なのか事前に確認しておくことがポイントです。

注目を集めているIoTビジネス

IoTを活用したビジネスモデルは、自動車や家電以外にもさまざまなジャンルに広がりを見せています。最後に、注目されるIoTビジネスを3つご紹介します。

工場現場の使用例

製造工場における生産性アップや管理コスト削減に、IoTが一役買っています。たとえば工場機器に制御ディスプレイを設置し、その動作状況を把握するのがその一例です。問題発生時には機器が自動的に報告を行います。

工場内部の自動化はどんどん進んでいますが、トラブル対応や機械の動作管理など人間の担当する作業はまだ残っています。IoTソリューションの発展によって、そうした作業までも置き換えるような体制が構築されつつあります。

オフィスの使用例

工場だけでなく、オフィス現場でもIoTが業務効率化に一役買っています。たとえば、かけるだけで文字を撮影し読み上げるメガネ「スマートグラス」は、難しい機械の配線修理など熟練者が現場に行かず支持ができ、オフィスの中で遠隔管理することが業務の効率化を支援します。他にも、会議室の空き状況をセンサーで取得し、その情報を基にWebで閲覧できるサービスも出てきています。

医療現場の使用例

医療現場でのIoT活用も大きなトピックの一つです。厚生労働省は保険政策の重点を治療から予防へと移しており、国家的レベルで予防医学が推進されています。IoTは、個人の健康情報をつぶさに取得・蓄積することで予防医学に貢献すると期待されています。

たとえば、時計やリストバンドのようなウェアラブルデバイスで心拍数や脈拍、血圧などさまざまなデータを取得できます。これをデータセンターへ送信・蓄積し、医師がデータを見られるようにすれば病気の予防や効率的な治療につながります。

また、通信機能付きのペースメーカーも存在します。問題が発生した際には医療機関へアラートを送信し、問題の早期発見と早期介入を可能とするものです。医療機関が患者の健康状態を遠隔モニタリングすることはもちろん、将来的には患者自身がアプリで健康情報を参照できるようになり、患者が治療に関わる双方向型の健康管理が進むと期待されています。

IoTが生活とビジネスを隅々まで変革する

IoTは、テクノロジー業界のみならず既存のあらゆる業界に大きなインパクトを与えています。インターネットが身近な生活や仕事の隅々にまで浸透することで、私たちの暮らし方や働き方は変わっていくことでしょう。IoTに関するニュースは今後も増えていくと考えられますので、ぜひアンテナを張って動向をチェックしていただければと思います。

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