子供を持つ保護者の多くは、子供が勉強しないことに対して「このままで大丈夫なのだろうか」と心配しているものです。勉強を毛嫌いする子供、何度言っても理解しない子供、机に座るだけでやる気をなくしてしまう子供など、さまざまなタイプの子供がいます。子供が自分から学習習慣を身に付けられるようにするには、保護者としてどのような働きかけが必要なのでしょうか。
今回は、子供が勉強しない理由やモチベーションを上げる方法、向き合い方の注意点についてお伝えします。
子供が勉強しない主な理由
まず、子供が勉強しない理由を列挙してみましょう。自分の子供も、これらのうちのいずれかに当てはまるかもしれません。
勉強に苦手意識がある
そもそも、勉強自体に苦手意識を感じているかもしれません。
幼稚園だと時間のほとんどは遊びですから、少し文字や計算など勉強に近い活動をしていても「勉強しなければいけない」と感じる子供はほとんどいないでしょう。それが小学生になると急に雰囲気が変わり、「授業中は前を向いておとなしく座っていなければいけない」「先生の話を静かに(周りの子供と話をせずに)聞いていなければいけない」など、決まり事が増えます。「先生と生徒」という関係自体も、子供には慣れないものです。
学習レベルが適しておらず授業で習うことの意味がよく分かっていないと、子供にとって「勉強=苦痛な時間」というイメージがすり込まれてしまいがちです。この場合、仮に塾に行っても問題は解決しないでしょう。分からない問題が出てきたときにうまく対処する術を持たず、続けられないのです。
勉強に必要性を感じていない
学年が上がるにつれて「勉強して何の意味があるの?」と挑むようにお母さんやお父さん、先生などに質問してくる子供も出てきます。
勉強自体に楽しみを見出せず、しかも勉強が将来役に立つことをイメージできていない子供は、何のために勉強するのか納得できずモチベーションを上げられないでしょう。
勉強以外のことに夢中になっている
現代の子供は、楽しいことに囲まれています。ゲームやスマートフォン・タブレット、遊び事や習い事など、子供を夢中にさせる活動はいくらでも存在します。勉強に夢中になる子供というのはなかなかいないもので、やはりほかの楽しみよりも後回しになってしまいます。
集中できる環境が整っていない
自室を持つ子供ですと、そもそも部屋が散らかっていて集中しにくいという側面もあります。手の届く範囲にゲーム機やマンガなどが転がっていると、勉強するつもりがあってもつい手を伸ばしてしまい、気づけば時間が経っていた……。そんな経験は、保護者の方でもしたことがあるでしょう。
中には、椅子に長時間座っていられない子供もいます。椅子自体の問題もありますが、勉強が苦痛であるあまりに「眠気を催す」という癖がつくことがあるのです。こうなると、勉強習慣を身に付けるのは困難です。
ストレスを感じている
大人でも、上司や配偶者などにストレスがあると仕事に集中できないことがあるのではないでしょうか。子供も家庭や学校生活など、勉強以外のことにストレスを感じている可能性もあります。「勉強しないと親が怒る」「学校の先生と相性が悪い」「宿題が多すぎる」など、ストレスによって勉強への集中力を妨げられている子供は意外と多いものです。
勉強に対する子供のモチベーションを上げる方法
子供の集中力を奪う原因は数多くありますが、それに対してモチベーションを上げるにはどうすればよいのでしょうか。
成功体験をつくる
第一段階として、成功体験を積むことです。子供が達成できそうな範囲の目標を立ててそれを達成できると、「自分はできる」という実感が持てるようになり、モチベーションの向上につながります。小さな成功体験を積み重ねることで、自分から努力できる人間になっていきます。
ここで注意したいのは、親が勝手にレベルの高すぎる目標を設定しないことです。子供が「勝手に作られた目標」「どうせ達成できない」と感じてしまうと、結果としてますます意固地になってしまいます。
親のエゴで、つい「テストでこれくらいの成績は達成してほしい」と親が思うような目標を立ててしまいがちですが、なるべく子供と一緒に話し合って達成できそうな範囲の目標にしてください。
子供と一緒に勉強する
親が「勉強しないとダメ」などと強い言葉を発し、子供が反発するのでは、解決の糸口が見出しにくくなります。そこで、親が子供と一緒に勉強するのがおすすめです。こうなると衝突が少なくなり、勉強しないという問題の解決につながるケースも少なくありません。
たとえば子供が分からない問題を一緒に解いたり教えてあげたり、といった程度でも構いません。親と一緒に取り組むことで、勉強する時間が子供にとって楽しみとなる可能性もあります。
ただし、頭ごなしに叱らないこと、一から十まで教えてしまわないことの二点は注意してください。あくまで目線を揃えることを意識し、いわゆる「上から目線」は避けるのが大切です。
学習環境を整える
勉強机や周辺を掃除し、子供の家庭学習の妨げとなるゲームやマンガ、おもちゃなどを遠ざけましょう。できれば子供自身、あるいは親子一緒で学習環境を整えられるのが理想です。「掃除くらいで集中できるようになるわけない」と感じるかもしれませんが、これだけで大きく学習態度の変わる子供もたくさんいます。目に入ってくる情報量が減ることで、勉強へ集中できるのです。
勉強の励みになることを用意する
できれば避けたいのですが、最終手段として子供のやりたいことや欲しいものを勉強後の「ごほうび」として設定し、勉強を促す手もあります。ゲームやテレビ、マンガ、お菓子などと引き換えに勉強してもらうわけです。
この方法は、一時的には最も効果の上がりやすいものかもしれません。しかし、ごほうびによって勉強する習慣が身に付くと、逆にごほうびがない限り勉強しなくなる可能性も高いです。できれば、ここまででご紹介したほかの方法をまずは試していただければと思います。
勉強しない子供と向き合う際の注意点
子供が親の希望通りに勉強しないというのは、ある意味で当たり前のことです。子供が勉強しないときに、どう子供と接するべきかご説明します。
勉強しないことを責めない
親としては、勉強しない子供に対してつい毎日のように厳しい声かけをしてしまいがちです。しかし闇雲に叱っても子供が反発するだけですから、感情が先走るのはグッとこらえなければいけません。
その代わりに、子供の気持ちに寄り添って状況を分析し、勉強しない理由を見つけたいところです。子供が「勉強が分からない」「先生が苦手」など理由を認識している場合は、その理由を解決する道をともに探るとよいでしょう。
しかし、多くの子供は「なんで分からないのか分からない」「どこが分からないのか分からない」など、理由が認識できずにもがいているものです。その場合は、理由を子供と一緒に考えてあげましょう。
勉強を強要しすぎない
プレッシャーを与えないことも重要です。プレッシャーをかけると、子供にとって勉強が余計に苦痛となる可能性もあります。「勉強しなかったら○○しない」など、罰則を設けるような対応も避けましょう。大人でさえ、行動を強要されるのは嫌なものです。
子供が勉強をポジティブなものとして認識できるよう、工夫しましょう。たとえば、ただ教科書や参考書の問題を解かせるだけでなく、親がお話をしながら勉強を教える、子供に学んだ内容を説明させるなど、双方向的なやり取りを取り入れるのが一つの案として考えられます。
難しい勉強ばかりやらせない
親は子供の理解内容を高く見積もってしまうものです。そのため、実際の子供のレベルより難しい参考書や課題を与えてしまうケースが多いです。難しすぎて子供が投げ出してしまっては意味がありません。
できれば、親が「易しすぎる」と思うくらいのレベルから始めるとよいでしょう。
子供は勉強しないものと認識して長い目で見守ろう
勉強する子供というのはあくまで少数派で、小学校1年生や2年生のうちは勉強法も分からず、成長すると勉強以外の遊びばかりやりたがり、高学年から中学生・高校生の反抗期に入ると受験が近いのに親に反発して勉強しないのが大多数の子供です。「勉強しないのは普通のことだ」と考え、少しずつでも勉強習慣を身に付けられるよう無理のない範囲で働きかけるようにしましょう。
また、場合によっては親が関わりすぎなくても、時間が解決してくれるケースもあります。子供は急速に変化していくものですので、長い目で見守ってあげてください。どうしても不安な場合は、学校の先生やスクールカウンセラーなどに相談してみましょう。