幼児教育無償化はいつから?対象となる世帯や具体的な補助金額とは

お絵かきする手

2019年10月より、幼児教育無償化が全面実施されます。従来も一部世帯を対象に費用の補助や減額などの措置が行われていましたが、その対象範囲が一気に拡大されることになります。子育てとお金の問題に頭を悩ませる子育て世帯にとって、大変うれしいニュースと言えるでしょう。

ただし幼児教育無償化については、まだ全てが最終的に決まったわけではないために分かりにくい点が多々あります。今回は、2019年1月の段階で明らかになっている内容を踏まえて、幼児教育無償化の基礎知識と対象世帯や補助金額、覚えておきたいポイントについてご紹介します。

幼児教育無償化の基礎知識

幼児教育無償化の概要と、実施に際して懸念されている課題についてご説明します。まずは、開始時期や内容をざっと理解していただければと思います。

幼児教育無償化とは

幼児教育の無償化は、子育て世代に対する施策の一環として浮上してきたものです。安倍内閣における「新しい経済政策パッケージ」の一つとしていの一番に挙げられ、2017年12月に閣議決定されました。その後の協議の結果、2018年12月には、関係閣僚会議で具体策が決定するに至っています。

この政策は、幼児教育を受ける際の世帯の費用負担を軽減するとともに、質の高い幼児教育を全ての子供に対して保証することを目的としています。子育てにかかる費用を減らすことで、将来的には少子化問題を食い止めることが期待されています。また幼児教育を受けた子供の将来の所得の向上、そして生活保護受給率の低下がもたらされるとも言われています。

幼児教育の無償化は、消費税率の引き上げ(8%→10%)に合わせて2019年10月から実施されることが決まっています。年長クラス(5歳児)を対象として、4月から先行実施されるという話もありましたが、最終的には開始時期を全学年で揃える方向で決まりました。また2020年4月からという声もありましたが、消費税引き上げに伴う家計負担の増加を緩和させるべく半年前倒しされる形となりました。

幼児教育無償化の懸念点

幼児教育の無償化に対して、さまざまな懸念点が指摘されています。まず、施策の優先順位です。少子化の改善や待機児童の解消など、幼児教育や子育て世帯への支援が重要であることに異論はないものの、そもそも幼児教育を無償化しただけで待機児童が減少するのか、少子化が改善するのかは疑問が残ります。

幼児教育の提供側である保育士・幼稚園教諭の労働環境の改善、給与の向上などを実施しないと、幼児教育の需要増を吸収しきれず、むしろ待機児童の増加につながるとも考えられます。仮に児童を保育園や幼稚園で受け入れられたとしても、保育士・幼稚園教諭の数が足りずに、かえって保育・教育の質が下がる可能性もあります。全国の市長で構成される全国市長会は、認可外施設への公費の投入に反対していました。施設の環境改善とスタッフの待遇改善が今後の課題となりそうです。

また財源の確保も大きな課題です。世帯からの保育費徴収を減らすということは、投入する税金の額が増加するということになります。政府は、幼児教育無償化と同時期に開始する消費税引き上げの増収分を充てる見通しではありますが、それで事足りるのか明らかではありません。地方側の負担も大きいことから、初年度は国が全額負担とする方針が決まっています。

幼児教育無償化の対象世帯と補助金額

幼児教育の無償化について、もう少し詳しく見ていきましょう。児童の年齢(学年)ごとに対象世帯や助成額が異なりますので、注意が必要です。

0~2歳児がいる世帯

0歳から2歳までの子供については、全ての世帯が無償化対象となるわけではありません。現状で住民税が非課税となる低所得世帯のみ、無償化が実施されます。

住民税非課税世帯は、認可施設のみならず認可外施設に子供を通わせるための補助を受けられます。認可施設(幼稚園、保育所、認定こども園など)の場合は完全に無料、認可外施設(ベビーホテルやベビーシッター、事業所内保育などを含む)の場合は月額4万2,000円までの利用料が国から支給されます。超過分は自己負担です。

なお、送迎費や給食代、行事費など、実費として徴収されている費用は無償化の対象には該当しません。

3~5歳児がいる世帯

3歳以降の子供については、年収や所得制限なく全ての世帯が認可施設や認可外施設に通うための費用の無償化対象となります。

・幼稚園に通う場合の補助金額

公立の幼稚園の場合は、授業料全額が無償化され、利用料の上限はありません。一方で私立幼稚園(新制度の対象とならない幼稚園)の場合は、利用者負担上限額として定められた月額2万5,700円を上限として無償化します。実費で徴収される費用は、やはり無償化の対象とはなりません。

なお幼稚園の預かり保育を利用する場合は、幼稚園の利用料と合わせて月額3万7,000円を上限として利用料を無償化します。超過分は自己負担です。

ここでいう「預かり保育」とは、保護者の希望に応じて4時間を標準とする幼稚園の教育時間の前後や土曜・日曜、長期休業期間中に行われる教育活動を指します。無償化対象となる利用料は、実際の利用料に応じて計算されます。

・認可保育園、認定こども園の補助金額

認可保育園や認定こども園などの扱いは、幼稚園と同様です。全世帯を対象に保育料が無償化対象となり、その上限は設けられません。ただし、実費徴収分は無償化の対象外となります。

・認可外保育施設の補助金額

国が定める指導監督基準を満たす認可外保育園の場合は、全世帯を対象に月額3万7,000円を上限として利用料の無償化が行われます。超過分は自己負担です。

認可外保育施設以外に、一時預かり事業や病児保育、ファミリー・サポート・センターなどの保育サービスも無償化対象に含まれます。複数のサービスを併用する場合も、上限額の範囲内で無償化対象となります。

なお幼稚園で預かり保育を実施しておらず、認可外保育施設を利用する場合も無償化の対象に含まれます。この場合の無償化の上限額は、1万1,300円から預かり保育に関する無償化給付の支給額を差し引いた額となります。

幼児教育が無償化される前に知っておきたいこと

幼児教育の費用補助を受けるために、必要な手続きがあります。また無償化の範囲は限定されていますので、あらかじめ自分が含まれるか確認してください。

補助を受けるには申請を行う必要がある

幼児教育の費用補助を受けるには、自治体から「無償化措置の対象世帯」として認定されなければいけません。

具体的な手続きについては検討されているところですが、現状でも補助や費用の減額などを申請するには施設から配布される必要書類を提出する必要があるのを踏まえると、無償化に際しても同様の手続きとなる可能性が高いでしょう。家庭の状況や通う幼稚園・保育園などによって事情が異なりますので、入園先の施設や自治体に問い合わせるのがベストです。

なお全世帯が無償化対象となる3~5歳の認可施設に関しては、手続きが不要となる可能性もあります。こちらについては今後のニュースや施設のアナウンスを参考にしてください。

無償化の対象にならない費用がある

前述の通り、実費で徴収される費用は無償化の対象外です。入園料や制服代、学用品費、スクールバス・電車などの交通費、給食費、イベント費用などは、これまで通り各世帯が負担します。基本的に、施設や預かり保育の利用料だけが対象であると認識しておけば大丈夫です。

また無償化対象内であっても、上限額を超過した分は自己負担です。

幼児教育の無償化については最新のニュースを追いかけよう

2018年12月になってようやく具体的な内容が固まってきた幼児教育無償化ですが、検討が進むにつれてその内容は少しずつ変化しています。しかし、雑誌やインターネットの記事を見ていると古い内容のままで更新されていないものも散見されます。また、万が一消費税の引き上げが延期・凍結されると、その税収を充てるはずの幼児教育無償化も棚上げされるかもしれません。

ニュースをチェックするとともに、できれば文部科学省や内閣府など政府の最新資料を確認するとよいでしょう。自治体からチラシやパンフレット、リーフレットなどが配布される可能性もあります。内容が複雑でよく分からない場合は、自治体の担当者に尋ねてみてください。

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