小学校の新学習指導要領のポイント|改訂で何が変わるのか?

校舎

2020年から、学習指導要領が大きく改訂されます。小学校でも、教科内容や教育方針などが変化することが予想されます。保護者としては、学校でどんな教育を行うのか気になるところでしょう。

そこで今回は、学習指導要領改訂の背景や新学習指導要領のポイントをご紹介します。学習指導要領にこめられた「子供たちへのメッセージ」を読み取りましょう。

学習指導要領の基礎知識

教育関係者でもない限り目を通す機会は少ないかもしれませんが、国の教育に対する考え方が学習指導要領にはよく表現されています。学習指導要領の基本を理解しましょう。

学習指導要領とは

学習指導要領は、文部科学省が告示する教育課程の基準です。文部科学省が管轄している小学校から中学校、高等学校、その他の学校に至るまで、あらゆる教育課程と学校における学習活動に学習指導要領の内容が適用されています。学校は学習指導要領に沿って教科書を選び、学習計画やカリキュラムを立てています。

この学習指導要領は、数年から10年程度で改訂を繰り返しています。戦後教育が本格的に開始された1947年から数えると、2018年までに7回の全面改訂を経験しています。そして2018年から2022年にかけて、大規模な改訂が予定されています。

学習指導要領の内容

学習指導要領の内容は、全体に関わる「総則」をはじめ、各教科の内容、外国語活動などの在り方について具体的に指針を示している箇所もあります。近年では、総合的な学習の時間や道徳など子供の考える力や倫理観などに関する内容が増えています。

年間の学習目標や、先生の指導計画の作成や校内研修の参考となるところもあります。学習指導要領はいわば「学校および教師の教科書」であり、保護者が内容を大まかに理解しておくと、子供が学校で学ぶ内容を知る目安になります。実は文部科学省のホームページから誰でも資料のPDFファイルをダウンロードできますので、興味があればぜひ目を通してください。

学習指導要領改訂の背景

学習指導要領の内容は、中央教育審議会(中教審)の話し合いを基に決められます。そこには、社会の変化に対応できるような資質や能力を子供に身に付けてほしいという国のメッセージがこめられています。つまり学習指導要領を改訂するのは、子供や教育に対する見方、あるいは社会そのものの変化を反映するためなのです。

特に2018年以降に予定される改訂の背景は、グローバル化の進展や人工知能(AI)・ロボット・ビッグデータなどといったテクノロジーの発達などがあります。社会の変化はスピードを増しており、従来の学習指導要領では一部対応しきれないと判断されたことから全面的な改訂を国が決断するに至ったわけです。

今度の社会を支えていくには、指示に従って勤勉に働く労働者だけでは足りません。一人ひとりの持つ豊かな感性を活かし、他者と協働しながら新たな価値を創出するような人材が求められています。新学習指導要領の背景には、そうした人材の輩出を実現できるような公教育であろうとする国の思いが存在すると考えられます。

小学校の新学習指導要領の方向性

これから小学校に上がる子供は、新学習指導要領に基づいた教育課程を経験することになります。そこで、その学習指導要領の方向性を整理しましょう。

目指す姿

新学習指導要領では、方向性を以下のように3つ定めています。

・生きて働く知識・技能の習得
・未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成
・学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性等の涵養

実社会や子供たち自身の経験から切り離された知識ではなく、あくまでそれらと密接に結びついた知識・技能を重視していることがうかがえます。たとえば学校で学んだ「沸騰」を、鍋の中でお湯が煮えたぎっている現象と結びつけて実感を深めるようなことが想定されているのでしょう。

そして学んだ知識や技能を活かして、経験したことのない状況にも対応できる能力が求められています。高い山では平地より低い温度で水が沸騰しますが、初めて接したときに知識を活かして仮説を立て、言葉で表現して場合によっては検証するような力を身に付けるのが望ましいと考えられます。

そして、実社会との関わりの中で新たな学びに向かおうとする学習意欲も重要です。このように、社会と連携・協働するような学校教育を通じてよりよい社会を目指すのが学習指導要領の目標であると推測されます。

各学校には、この新学習指導要領を活用した「カリキュラム・マネジメント」が求められます。新学習指導要領に固執しすぎず、あくまで目の前の生徒に合わせてカリキュラムを編成するのです。また地域の現状を踏まえて、教育活動に必要な人的・物的資源を学校外からも取り入れ、指導内容の改善のために効果的に組み合わせる必要もあります。

学ぶ内容の変化

新学習指導要領では、将来的に必要となる資質・能力を見据えて新たな教科や科目が設けられています。

その代表例が、外国語教育の教科化です。従来は5・6年生のみ教科外の活動として「外国語活動」を実施していました。新学習指導要領となると、5・6年生は「外国語」を正式な教科として週2時間行うことになります。また教科外の外国語活動は3・4年生が行うようになり、結果として外国語学習が前倒しされます。

もう一つの大きな変化が、プログラミング教育の導入です。ICTを用いた情報活用能力を「学習の基盤となる資質・能力」と位置付け、教科横断的に育成します。プログラミング教育が外国語のように教科化されるわけではなく、各学校の判断で随時取り入れることとされています。具体的な学年や教授内容は示されておらず、「各教科の特質において計画的に実施すること」程度の指針が総則に記載されるとともに、算数・理科・総合的な学習の時間での学習場面の例示にとどまっています。

以上のように、外国語学習についてはどのように変化するのかある程度明確であるのに対し、プログラミング教育については学校の裁量に任される範囲が大きいようです。こうした課題の説明やその対策が気になる方は、「プログラミング教育必修化の狙いとは?目的と課題、親ができること」を参照してください。

学び方の変化

学習内容だけでなく、学び方に対する考え方も変化しています。特に、アクティブ・ラーニングに代表される主体的・対話的な学び、深い学びを重視しています。具体的には、子供たちが自ら興味・関心を持って学習すること(主体的)、教職員や地域の人とコミュニケーションを取りながら自分の考えを広げること(対話的)、そして学習した知識を相互に関連づけて理解を深めること(深さ)を指しています。

この背景には、知識偏重型の教育への反省がこめられているのは明らかです。テスト対策として暗記したらそれっきり、という従来の学び方を脱却し、知識に振り回されるのではなく知識を使える子供の育成が目指されています。

新学習指導要領の改訂で変わる小学校の授業内容

学習指導要領の改訂によって、小学校の授業内容も変化することが予想されます。特に外国語学習・情報学習・地域学習の3点からその変化についてご説明します。

外国語学習

前述の通り、小学校中学年から教科等の形で外国語教育が導入されます。高学年になると、教科書を使い、テストを行い、成績をつける教科として外国語が取り入れられます。

単語や文法の暗記よりも、文部科学省は外国語のリスニングとスピーキングを中心とした学習を指向しています。ネイティブスピーカーのTA(ティーチングアシスタント)も使って授業改善しつつ、会話能力を重視した教育内容になると思われます。

情報学習

小学校でのプログラミング教育は、決してJavaやC言語などのプログラミング言語をみっちり教えるものではありません。プログラミングに必要な条件分け・ゴール設定などの論理的思考(プログラミング的思考)を身に付けることが目的です。プログラミング教育でプログラミング言語が書けるようになるわけではないという点は注意が必要でしょう。

地域学習

地域と学校との連携が重視されています。少子高齢化(人口減少)によって、地域と子供の関わりが薄れることを問題視する立場から、地域の伝統や文化に関する教育の充実化が主張されています。

新学習指導要領を踏まえて子育ての方針を考えよう

実際に教育がどう変わるのかについてははっきりしない部分も多いものの、既に発表された新学習指導要領からは「外国語」「テクノロジー」「学習観」の3点で明確なメッセージがこめられています。未来を生きる子供たちにとって、この3点が重要なポイントになると国が判断しているのです。

そうであれば、保護者としても子育ての方向性の参考にすべきでしょう。将来困らないような力を身に付けてほしいのであれば、外国語(特に英語)やテクノロジーを学ばせるとともに、自発的な学習意欲を引き出すようなサポートをしてあげるとよいでしょう。

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