「リトミック」は、音楽教育法のひとつです。音やリズムを楽しむことで、音感のベースや音楽への興味関心を育み、子供の成長にも効果があるとされています。近年では、ベビーリトミックや親子でレッスンを受けられる習い事のほか、カリキュラムとして実施している幼稚園もある傾向です。親子でも楽しめるリトミック、詳しい情報をご紹介します。
リトミックの基礎知識
見聞きする機会が増えた「リトミック」ですが、実際にどういったものなのか、ご存じですか?まずは、リトミックの基礎基本からご紹介いたします。
リトミックとは?
リトミックとは、19世紀末、スイスの作曲家・音楽教育家のエミール・ジャック=ダルクローズによって考えられた音楽教育法です。別名、「ダルクローズ音楽教育法」とも呼ばれています。知識や技術からではなく、音楽の楽しさに触れることから音楽の世界に入る考え方が特徴です。日本では、作曲家・山田耕筰がダルクローズを訪ね、大いに影響を受けたとされています。教育学としての取り組みが始まったのは戦後のことです。
リトミックのコンセプト
音楽教育と聞くと、楽譜の読み方や楽器演奏の正しい方法を厳しく指導されるのではと思うかもしれません。実際に、親自身がピアノを習っていた場合、イメージするのはそのときのレッスン風景でしょう。楽譜を読み間違えたり指使いを間違えたりしては叱られ、毎日自宅で練習することを義務付けられたという苦い思い出がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
リトミックは、知識や技術面からアプローチするピアノレッスンのような、「厳しい」「難しい」といったものではありません。リトミックのコンセプトは、「音楽を体全体で味わうこと」です。具体的なレッスン内容は、音楽に合わせて手遊びをしてみたり、楽器や身近な生活用品で音を奏でてみたり、肩ひじを張らずに音と遊ぶものばかり。
幼稚園や保育園の子供たちは、体を使って遊ぶことが大好きです。遊びの延長で音楽と触れ合い、自分で自由に表現することでリズム感や音感、情操を育めます。感情豊かな人格を形成することが、リトミックの目的なのです。
習い事になると、才能の有無が気になる親もいるでしょう。しかし、リトミックは遊びのようなカリキュラムのなかで音楽を楽しむところがスタートです。そのため、親が他人と比較してしまうことなく、純粋に音楽を楽しめるのではないでしょうか。
リトミックがもたらす効果
リトミックがもたらす効果には、さまざまなものがあります。実際に子供にリトミックを体験させたとき、得られるメリットについてご紹介します。
音感やリズム感が育成される
リトミックのカリキュラムは音遊びが中心です。全身を動かしてリズムや音を感じるため、自然と音感やリズム感が養われます。遊び感覚で楽しみながらできるので、「習い事」になると嫌がってしまう自由奔放な子供でも、自然と身につけられるでしょう。
運動能力が向上する
リトミックでは、音楽に合わせて手を叩いたり、足を踏み鳴らしたりする動作を行う傾向です。年齢によっては、「軽くジャンプをする」「動き回わる」という運動もあります。そのため、全身を動かすリトミックは、リズム感とともに基礎運動能力のアップも期待できるのです。スポーツとリズム感は一見無関係のもののように思えますが、実際には密接にかかわっています。
実際に、世界で活躍するアスリートたちも、体を動かすときのリズム感を大切にしています。競技によっては、テンポ感が如実に結果として現れるものもあるのです。そのため、スポーツのトレーニングのなかには、リズム感を鍛えるプログラムが組まれていることもあります。
サッカーのリフティングやバスケットボールのドリブル、走り高跳びなど、イメージをしてみれば、リズムがある動きを必要とするスポーツの多さに気づけるのではないでしょうか。軽快なリズム感で動けるようになると、スポーツのセンスも磨かれるのですね。
社会性が身に付く
リトミックはグループレッスンが中心です。同じ年ごろの子供が集団でレッスンを受けるため、順番を待つことなど社会的なルールを学ぶことができます。また、リトミックのレッスンでは、ただ待つだけではなく、待っているときには他の子供の表現をしっかり見ることが必要です。
自分とは違う表現を見ることで、「他人」の存在をあらためて意識できるようになるでしょう。表現は子供によって異なるものですから、「他人との違い」を受け入れるひとつのきっかけにもなりますね。カリキュラムには、お友達が演奏する楽器に合わせて体を動かすなど、一緒にリトミックを行うものもあります。こうしたレッスンを受けていくなかで、コミュニケーション能力も身につけることができるでしょう。
表現力・想像力が豊かになる
リトミックのなかには、音やメロディーを聴きながら動物の真似をしてみたり、自由に動きで表現をしてみたりするカリキュラムがあります。表現方法には正解がありません。子供が本来持っている自由な想像力を働かせることで、より表現力や想像力が豊かになることでしょう。
現代の子供たちのなかには、ルールや指示を受け続けることで、「自由に表現すること」に苦手意識を抱いている子も多くいます。リトミックは、子供につけられた枷を外す役割も担えるでしょう。想像力は、生きていくことにおいても、重要なスキルです。心と頭が柔軟な子供時代だからこそ、ぐんぐん伸ばしてあげたいものですよね。
集中力が身に付く
「音が聞こえたらスタート」「音がやんだらストップ」など、リトミックには即時反応力を高められるカリキュラムも組まれています。即時反応力とは、音やリズムが変化したときに、すぐに反応できる力のことです。耳を音に集中させることで、集中力や注意力も磨かれるでしょう。その結果、学校の授業を聴く態度にもいい影響を与えられますよ。
ゲーム感覚で身につけられる点が、リトミックのポイントです。「集中しなさい」と口で伝えるよりも、何倍も効果があるのではないでしょうか。
リトミックの始め方
リトミックを実際に始めようと思ったとき、レッスンの探し方や費用など、あらかじめ知っておきたいことをご紹介します。
何歳から始められるのか?
音やリズムに触れることを目的とするリトミックは、0歳から始められます。赤ちゃんでもリズムを聴いて楽しむことは十分可能です。ベビーリトミックとして、赤ちゃんに応じたカリキュラムが用意されているので、月齢・年齢に応じたレッスンを探してみましょう。
なお、首が据わってからを目安としているレッスンが多いようです。ベビーマッサージと組み合わせたレッスンもありますよ。幼児・小学生と成長するに従い、より「体を動かす」ことが主体になっていきます。幼いうちは親も同伴して一緒にレッスンを受けますが、成長すると子供たちと先生だけのレッスンに移行するのが一般的です。
カリキュラムはどのような内容なのか?
リトミックのカリキュラムは、教室やスタイルによって異なります。ピアノ教室でリトミックを取り入れているところもありますし、幼稚園や保育園が、歌や踊りを行う際にリトミックを導入している場合もあるでしょう。
子育て支援の一環として、公民館や児童館で講座を開講していることもあります。公的機関のサークル活動は、費用が無料・安価であるケースが多いため、広報やサイトでチェックして参加してみたいところです。
幼児・小学生になると、リトミック専用のレッスンや、先述したようなピアノ教室で習うことができます。レッスンでは、音大卒の方が自宅で教室を開いているところもありますよ。
リトミックの始め方
しっかり始めることにした場合、レッスンには定期的に通うことになります。そのため、リトミック教室を探す際は、通いやすさも考慮しましょう。内容やレッスンの頻度、費用も教室によって異なります。レッスン費用は1回あたり1,000~3,000円程度です。月謝では3,000~8,000円程度が相場といえます。
始める際には、入会金や教材費が別途必要となる場合もあります。教室を比較する際は、こうしたことも確認しておくことが大切です。公式サイトがあればチェックし、クチコミがないかどうかも合わせて調べておきましょう。
教室によっては、無料体験レッスンを開講しているところもあります。実際に体感してみてわかることも多いものです。いきなり入会するよりも安心して始められるのではないでしょうか。
音楽を楽しみながら豊かな心を育もう
本来、音楽は楽しいものです。楽器の演奏ができなくても、老若男女みんなの心が明るくなるものですよね。厳しいレッスンを受けたために、音楽嫌いになってしまってはもったいないことです。子供の自由性を大切にしながら、協調性やルールも身につけていけるリトミックは、習い事が不向きなお子様にもおすすめできます。
リズムやメロディーを楽しみながら、一生役立つ心の豊かさを子供に身につけさせてあげたいですね。