ICT教育とは、インターネットやタブレットなどのデジタル機器を教育に活用することです。文部科学省は2020年にすべての学校のICT化を推進しています。導入にあたってはさまざまな課題がありますが、今後は教育現場へ必ず導入されていくためポイントを把握しておきたいところです。
ICT教育とはどんなものなのかを押さえたうえで、子供が安心してICT機器を使うための準備ができるとよいですね。ここでは、ICT教育の基礎知識とその効果、海外での導入事例を紹介します。
ICT教育の基礎知識
まずはICTとは何なのか、日本では教育の現場とICTをどう関連づけようとしているのかについてみていきましょう。
ICT教育とは?
ICTとはInformation and Communication Technology(情報通信技術)の略称で、IT(Information Technology)とほぼ同じ意味です。
教育現場でのICTとは、情報通信技術を活用した教育を指します。たとえば、授業にタブレットや電子黒板などを活用したり、生徒が情報端末を活用したりすることで教育の質を高めることが期待されています。
「授業に映像や音声を視聴する」「手元で図形の裏を見る」「図を拡大する」など、自分の手元で操作できるような教材などを活用するのです。従来は、教科書だけで説明しきれなかった内容をイメージとともにわかりやすく説明できるメリットがあります。
2020年までにICT教育の環境整備を目指す
日本では、2013年に発表された「世界最先端IT国家創造宣言」により教育環境のICT化を推進する計画が進行しています。具体的には、教育のICT化に向けた環境整備として、2018~2022年度の5カ年計画を策定し、全国の教育委員会に通知をしている状態です。一例として、2020年までにすべての学校で一人一台の情報端末(タブレット)を導入し、それを活用した学習を推進することとしています。
また、ICT環境の整備を図ろうとする地域からのニーズに対応するため、文部科学省では2015年度よりICT活用教育アドバイザーの派遣事業を行っているのです。各地域では有識者から助言を受けることで、実態を踏まえて段階的にICT教育や機器が導入できるようになるでしょう。同時に、文部科学省はICT活用教育アドバイザーの活動報告書やマニュアルを作成し、ポータルサイトでの情報公開や資料配付などを通じ全国に共有を図っています。
ICT教育のメリットと懸念点
ICT教育は国が世界最先端のIT国家を作るという宣言のもとに行われています。ICTを導入するとどのようなメリットと懸念点があるのかについて詳しく紹介します。
ICT教育のメリット
・教育の効率化
2020年から小学校でも英語やプログラミングの授業が始まるなど、教育のカリキュラムが多様化・複雑化してきています。しかし、従来の教育方法のままでは板書や教材の準備に時間がかかります。もし、インターネット上の教育用コンテンツを利用して説明できるようになると、教師は説明に注力できるようになり、生徒とより密接に関われるようになることが期待できるのです。
・教師・生徒間のコミュニケーションの活発化
SNSやメールを通じて教師・生徒間でコミュニケーションが取れる点もICTならではの特徴です。従来は、質問があると休み時間や放課後などを活用して直接コミュニケーションするしかありませんでした。しかし、このような教師と生徒とのやりとりする部分についても、デジタル化しておけばいつでも対応できるようになります。
たとえば、ICTを導入すれば授業中のわからない点や疑問点を、すぐに質問することが可能です。生徒は何が重要かを主体的に考えるようになり、より積極的な授業に参加するようになることが期待されています。同時に人が聞いていると思うと言いづらい悩み事や相談など、言いにくいことでも気軽に相談できる環境が作れるでしょう。
・デジタル機器を扱うスキルの向上
ビジネスにおいてもデジタル機器の使用は必須です。そのため、子供のうちからデジタル機器に触れる機会があれば、より早く機器の使い方や正しい情報の取得方法に慣れることができます。
ICT教育の懸念点
・地域ごとの導入の格差
ICT教育を十分に実施するには、一人一台タブレットが必須となります。機材の導入には予算も必要なため、学校や自治体の状況によってはタブレットなどの調達が間に合わない可能性が出てくるでしょう。また、機器が導入されても、現時点ではすべての教師が必要なスキルを持っているわけではありません。そのため、地域や学校によって導入のバラつきが生じるおそれがあります。
・セキュリティ環境や機器状態の管理
まず、不正アクセスや情報漏洩など、重大事故を起こさないようにするための対処法が必要です。すべての機器について正しい知識をもとに適切なセキュリティ管理を行い、事故が起きないようにする必要があります。また、生徒が端末を落としてしまったり想定外の場所を触ってしまったりして、タブレットの故障が生じた際の対応も考えておくことが必要です。
・心身への影響
長時間パソコンやディスプレイを使った作業をする場合は、近視やドライアイ、めまいなどを引き起こすVDT(Visual Display Terminals、画像表示端末)症候群になる恐れがあります。目以外にも肩、首などに疲労を感じたり、有害な情報と接してしまい精神に影響が出たりするケースなども考えられます。
慢性的な不調が続くとイライラや不安感を招く可能性もあるため、どのくらいの時間をICTに関わる時間とすべきなのか慎重な検討が必要でしょう。
海外でのICT教育の導入事例
日本ではまだ準備段階といったICT教育ですが、海外ではすでに導入を終えて活用をしているところもあります。
ICT教育の導入は各国で進んでいます。特にICT教育が進んでいる国にはオーストラリア、デンマーク、イギリス、アメリカ、韓国などがあげられます。イギリスでは、「Computing」という教科を2013年に導入し、プログラミングや情報科学の基礎を深める教育が行われています。
しかし、日本と同様に教師の専門知識の不足や電子機器の未整備といった課題があります。ここでは、ICT教育の先進事例として、オーストラリア、デンマークの事例を下記で紹介します。
オーストラリアの事例
国土が広いオーストラリアでは、早い段階でICT教育の体制が進み、パソコンの一人一台体制が整っています。教材などは、国がデジタル教材として作成し、Webサイト上で公開しているのです。そして、授業の最初にはウィルスや不正アクセスなどインターネットの危険性を教え、事故を未然に防ぐ対策を行っています。
たとえば、端末にログインする場合は専用IDを使い、閲覧履歴が残るため教師が確認可能です。もし生徒のアカウントが問題のあるサイトにつながった場合は、教師が生徒にその場で警告できるといったセキュリティの対策も取られています。
デンマークの事例
デンマークは消費税率が25%と非常に高い国として知られていますが、小学校から大学院までの教育費が原則無料です。すべての教育現場では、生徒とのコミュニケーションをデジタル化することを目標として、ICT教育体制を導入しています。日ごろからメールやSNSを使って授業の質問・相談をしたり、小学校低学年からパソコンを使ってプレゼンテーションを行ったりしています。
さらに、ICTの活用により入学願書の電子申請、データの一元化管理といった事務作業の効率化も図られているのです。
ICTは今後教育現場の主流になっていく
教育現場では、タブレットや電子黒板などの情報端末を活用する準備が進んでいます。さまざまなメリットがある一方、地域や学校ごとの導入格差や機器の管理方法の確立、生徒の心身への影響などは課題点です。うまく活用できている国もありますが、まだ過渡期である日本では、それぞれの立場で臨機応変に対応することが出てくるでしょう。今後の動向にも注目しつつ、家庭でも子供たちがICT機器を安全に使えるようにサポートできるとよいですね。